【相続トラブル】事例で学ぶ!遺言書があっても相続でモメる理由とは?

一般的に遺産相続というと、一部の資産家だけの話と思われるかもしれません。しかし、司法統計のデータによると、遺産分割事件の件数は、ここ数年年間約1万件から1.3万件前後で推移しているのが実情です。

また、遺産分割の争いとなる遺産金額の割合は以下の通りです。
遺産分割の争いとなる遺産金額の割合※法務省「司法統計」(平成29年度)

金額別に見ると最も多いのが、1,000万円超5,000万円以下の層で約43%を占めています。1,000万円以下の約32%を含めると全体の8割近くが資産5,000万円以下の層なのです。

こうしたデータを見る限り、遺産相続をめぐる争いは一般的な家庭でも充分に起こり得る話ではないでしょうか。

そこで今回は、遺産相続について事例を紹介しつつ、相続対策のポイントを一緒に探ります。相続に関する難しい法律の話も、事例を通じて学ぶとわかりやすいかと思います。ぜひ最後までご覧ください。

ある著名作曲家が残した遺産にまつわる相続トラブルの話

ある著名作曲家が残した遺産にまつわる相続トラブルの話
今回の事例として紹介するのは、ある著名作曲家の遺産相続トラブルのお話です。生前は数々のヒット曲を残したA氏。誠実な人柄のまま、相続対策もぬかりなく行っていたようですが、思わぬところで相続トラブルが発生してしまったのです。

さて、どんなトラブルだったのでしょうか。

完璧な”終活”の落とし穴!?

完璧な"終活”の落とし穴!?

資産家の中には相続対策をおこたる人も多い中、著名作曲家であるK氏はしっかり遺言書を残し、相続対策を行っていました。

遺言書には妻であるA子さんに預貯金・自宅・別荘など、K氏が生前所有していた全財産を残すと書き残しています。

ところが、前妻の次男であるB氏が遺言書の内容に納得いかず自身の取り分を要求。「遺言書の内容は、妻であるA子が無理やりに書かせたものだ」と疑ってもいます。

実はK氏には以前にも結婚歴があり、前妻との間にB氏を含む2子に恵まれたものの、ほどなく離婚していました。

とはいえ、離婚後すでに40年以上が経過。人生後半をともに過ごした伴侶であるA子さんに全財産を残したいというのはごく自然な流れにも思えます。遺産相続にあたり、本人が残した遺言書は強い効力を持つはずです。

さて、K氏の遺言書通り全財産をAさんが相続できるのか、あるいはそれに不服のB氏にも遺産相続する必要があるのでしょうか。

遺産相続で知っておきたい基礎知識

遺産相続で知っておきたい基礎知識
さて、今回の事例から遺産相続を考える上でおさえておきたいポイントは以下2点です。

1)遺言書
2)遺留分

以下、「遺言書」から解説していきます。

遺言書の効力について

遺言書とは、財産を所有する人(被相続人)が自分の死後に財産をどう分けるのかの意思を示した書面です。原則として、遺言書を作成した人(被相続人)が亡くなった時から効力が生じます。

遺言書には有効期間はありません。亡くなる直前の遺言書であっても、仮に10年前の遺言書であっても、遺言の効力は同じです。

また、遺言は(遺言を書いた本人であれば)いつでも撤回でき、内容を修正や、新たに作り直すこともできます。

では、今回の事例の争点のように「遺言書の効力」はどこまで有効なのでしょうか?

法律では、遺言書の効力は「遺言によって指定された相続方法は法定相続分(※)に優先する」と規定されています。つまり、遺言は法定相続分以外の割合で当人の思う通り遺産を分け与えたり、特定の遺産を特定の相続人や相続人以外の人へ受け継がせることができるのです。

このように、遺産相続では、被相続人である当人が残した遺言書は強い効力を持ちます。

とはいえ、今回の事例のように「特定の相続人にすべての遺産相続させる」など、他の相続人の意にそぐわない遺言が出てきた場合はどうすればいいのでしょうか。

◆重要用語:「法定相続分」の詳しい解説は下記参照ください
ワンポイント解説:法定相続割合とは

遺言書は”絶対”ではない!-遺留分とは何か?

今回の事例でK氏が残した遺言書のように「特定の相続人にすべての遺産を相続させる」となると、さすがに息子A氏のような他の相続人が納得いかないケースも出てくるでしょう。

この場合、相続人は「遺留分」を主張できます。遺留分とは、一定範囲の相続人が遺言書に左右されない最低限度の遺産取得分が認められている民法上の権利を指します。つまり、遺言書でも排除できない相続人が取得できる最低限の財産の割合を民法では保証しているのです。

また、遺留分として相続人が取得できる割合は、法定相続人の2分の1(直系尊属のみの場合は3分の1)と定められています。そして、遺留分を請求できるのは、被相続人の配偶者や子ども、両親などの直系尊属だけで、兄弟姉妹は請求できないことになっています。

今回の事例に照らして考えてみましょう。K氏の相続財産は4億円。遺言書では全相続財産を妻であるA子さんに残すと書かれていますが、息子B氏が遺留分を主張することで、4億円の8分の1(法定相続分1/4の2分の1)、つまり5,000万円を受け取る権利が法律では認められるのです。

◆まとめ
・遺産相続にあたり遺言書の効力は強い。法律では「遺言によって指定された相続方法は法定相続分に優先する」と規定されている。

・ただし、たとえ遺言書であっても”絶対”ではない。法的には「遺留分」という、遺言書によっても奪われない最低限の遺産を受け取ることができる権利がある。

・今回の事例では、息子B氏が「遺留分」を主張すれば相続財産の8分の1を受け取ることができる。

補足:遺留分の請求は「現金のみ」に

2019年の民法改正により、遺言書の遺産分割の結果に不満がある相続人が「遺留分」を請求した場合、その対象は「相続財産そのもの」ではなく「遺留分相当の現金」と規定されました。

この規定により遺留分請求できるのは金銭のみとなり、今回のケースで言えば、息子A氏が遺留分として「K氏の生前の著作権」を相続したいと主張しても認められません。

ワンポイント解説:法定相続分とは

遺産相続する際、「法定相続分(ほうていそうぞくぶん)」という言葉をよく聞くと思います。法定相続分とは、被相続人(遺産を残して亡くなった人)の財産を相続する場合に、各相続人の取り分として法律上定められた割合を意味する言葉です。

また、民法では相続人になれる人の範囲が決まっており、これを法定相続人といいます。法定相続人には優先順位があり、順位ごとに法定相続分が変わる点に注意が必要です。

◆法定相続人の順位
法定相続人の順位

法定相続人の順位と相関図(表)

上表のように配偶者は必ず相続人となり、次にもっとも順位の高い(第1位順位)人が相続人になるのがルールです。

上の順位の人が1人でもいる場合、下の順位の人は相続人になれません。つまり、配偶者が存命の場合は、配偶者ともっとも順位の高い人が法定相続人となるわけです。

また、配偶者がすでにいない場合は、もっとも順位の高い人のみが相続人になります。逆に配偶者以外に第1順位から第3順位の人がいない場合は、配偶者のみ相続人になります。

◆配偶者の法定相続分

配偶者の法定相続分

上表の通り、配偶者は必ず相続人として財産が分与されます。また配偶者の財産分与の割合において、婚姻の期間による差はありません。婚姻期間が30年でも、3日でも、財産分与の割合は同じになります。

ただし、配偶者は法律上の婚姻関係が必要であり、いわゆる事実婚や内縁関係の場合は法定相続人には該当しません。

◆子供や孫など第1順位の法定相続分

子供や孫など第1順位の法定相続分

上表の通り、被相続人の子の相続順位は第一順位となります。実子の他、養子・認知した子も法定相続人に該当します。一方、孫は子が存命である限り、相続人になることはありません。

よくあるのが、複数の子どもうち1人がすでになくなっているケース(子と孫がまじる場合)です。この場合は、死亡した子の子(被相続人からみて孫)が第一順位の相続人となる。残りの存命の子と財産分与することになります。

以上が、法定相続分についての基本ルールです。

法定相続分は、遺産相続する上での法的な目安であり、絶対的なものではありません。遺産相続は、遺言書があればその内容に従うのが原則です。

遺言書がない場合は、遺産分割協議が行われ、相続する割合は相続人の間の合意の上で決まります。遺産分割協議では相続人全員が納得していればどのような割合で分割することも許されます。

しかし、相続人同士で公平を保つという観点からは、法定相続分を正しく理解し、その割合に応じて協議を進めることで、遺産相続をめぐるトラブルを回避できるでしょう。

遺産協議で合意に至らない場合は調停や審判によって遺産分割方法が決定します。法定相続分はこの調停や審判の際に基準となるものです。

今回の事例から学べる事

今回は遺産相続にまつわるトラブル事例から、相続対策の難しさについて学びました。
遺産相続は、すべての関係者が納得が得られないのであれば、いくら遺言書を書いても「絵に描いた餅」になってしまいます。

遺言書がなく、相続人同士で遺産相続の話し合いをする時は、相続人全員の同意が必要です。相続人同士が円満な関係であれば、遺産相続の話し合いも問題ないでしょう。しかし、相続人同士が長く疎遠になったり、関係が悪かったりする場合、遺産相続はトラブルに発展するケースが多くあります。

正しい知識と必要に応じて専門家をまじえながら、早めの相続対策をすすめることが重要です。

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