相続財産管理人とは?

相続が発生すると通常、その財産は相続人に引き継がれます。しかし、「被相続人とトラブルがあった」「負の財産の方が多い」などの理由で相続人全員が相続放棄し、相続人がいなくなることがあります。また、身寄りがなく相続人がいなかったり、相続人が行方不明であったりすることもあるでしょう。

家や土地などの不動産があった場合、管理をする人がいないと荒廃し、近隣に迷惑がかかります。また、債務があったり、定期収入のある不動産がのこされたりした場合も、誰かが管理をしなければ、困る人が出てきます。
このように、のこされた財産の管理が必要になったときに、申立てによって選任されるのが相続財産管理人です。

今回は、相続財産管理人はどういった役割を担っているのか、どのように選任されるのかについてお伝えします。
相続財産管理人

相続財産管理人とは?

相続財産管理人は、相続人全員が相続放棄をし財産を管理する人がいなくなったり、身寄りのない人が亡くなったり、相続人の一人が行方不明であったりしたときに選任される人のことです。利害関係人が家庭裁判所に申立てを行い、選任されます。
親族が選任されることもありますが、多くは弁護士や司法書士などの士業者が相続財産管理人になります。

相続財産管理人に選任された者は、財産の調査や管理をします。土地建物を売却したり、債務があれば貯金の一部から返済したりと、財産整理をする役割です。相続財産管理人は、それにかかる経費や報酬をその財産の中から得ます。そして最終的に財産が残れば、国庫に帰属させ、業務を終了させます。

相続財産管理人が必要になるのはどんなとき?

相続財産管理人が必要になるのは主に以下のようなときです。相続人がいないからと言って、必ずしも相続財産管理人を選任しなければならないというわけではなく、必要があればその利害関係人が申立てをします。なお、利害関係人については相続財産管理人の選任の申立ての仕方でご説明します。

相続放棄により、相続する人がいなくなったとき

「負の財産が多い」「被相続人に関わりたくない」等の理由で、相続人全員に相続を放棄されたが遺された財産の管理が必要であることがあります。そんなときに相続財産管理人が選任されます。

身寄りがなく相続人がいないとき

相続人がいない人が亡くなると、その財産は最終的には国庫に帰属しますが、誰かが手続しない限りは、管理者がいない状態になります。
「プラスの財産がある」「残された不動産により周りに迷惑がかかっている」等あれば、利害関係人が家庭裁判所に相続財産管理人選任の申立てをします。

相続人が行方不明であるとき

自らの意思や災害などで相続人が行方不明で、他に相続人がいない場合、相続財産管理人の選任が必要となる場合があります。

相続人が複数いるがそのうちの一人が行方不明の場合

被相続人の財産を分割するためには、相続人全員の署名捺印が必要です。そのため、行方不明者がいると遺産分割協議書が作成できず、遺産の分割ができなくなってしまうのです。
そういったケースでは、不在者財産管理人選任の申立てを行い、その相続人の代理人として財産を管理してもらえば、相続手続きが進められます。失踪者が戻ってきたら、財産はその人の管理下に戻されます。
災害などで死亡している可能性が高い場合は、失踪宣告を申立て、死亡したものとすることで、相続をスムーズに行えます。

相続人が確定するまでの間の財産管理者としての相続財産管理人

相続人の確定に時間がかかると、その間の財産を管理する者として、相続財産管理人をおくことができます。

相続の承認または放棄前の相続財産の管理者が必要なとき

相続財産の分割方法について、相続人同士でなかなか合意が得られなかった場合も、申告や税の支払いは待ってくれません。相続人の誰か一人がその役割を担うことで争いになりそうな場合は、遺産分割協議書が整うまでの間、その財産を管理するために相続財産管理人を立てることがあります。

推定相続人の廃除確定前の財産管理人が必要なとき

被相続人への虐待、重大な侮辱、著しい非行などがあった場合、申立てがあると相続人から廃除されますが、その確定前の財産管理のために相続財産管理人を立てることがあります。

限定承認がなされたとき

相続人が複数いた場合、限定承認するためには全員の承諾が必要です。その相続人の中の一人が相続財産の管理人となります。

参考書籍
『家庭裁判所における成年後見・財産管理の実務』片岡武/金井繁昌/草部康司/川畑晃一 著

相続財産管理人を選任すると報酬の支払いが発生する

相続財産管理人に仕事をしてもらうためには、もちろん報酬を支払わなければなりません(親族がなった場合はこの限りではない)。亡くなった方に負の財産を上回るプラスの財産がある場合は、そのプラスの財産から相続財産管理人への報酬が差し引かれます。
負の財産しかない場合は、その費用を工面しなければなりません。申立て時に申立人が、その分の費用を予納金として納める必要があります。
相続財産管理人はタダで財産整理をしてくれるわけではないのです。選任される相続財産管理人は弁護士などの士業者のため、その報酬も数十万~百万円程度と高額になるため注意が必要です。

多少なりとも財産があるなら限定承認という方法もある

相続放棄をしてしまうと、「財産を売却して、その費用で管理する」ことが出来なくなります。相続放棄したとはいえ、荒れ果てた不動産をそのままにすることになるので、詳しい事情を知らない近隣の方から苦情が入るケースもあります。
限定承認は手続きが非常に煩雑なので、それぞれのケースにより限定承認をしたほうがいいのかは判断しにくいのですが、不動産があるのならこちらを選択するのもいいでしょう。

限定承認は、

  • 債務は引き継ぎたくないが、形見や家宝は残したい
  • プラスの財産よりマイナスの財産の方が多いかもしれない
  • あとから借金が出てくる可能性がある

等の場合に利用されます。簡単にご説明すると、「マイナスの財産があった場合は、被相続人の財産の範囲で返済し、賄いきれない分の債務の責任は負わない」というものです。形見や家宝を残したければ、その分のお金を払うことで手元に残せます。

もし、相続放棄をするのなら、その相続放棄により新たに相続人となる人に必ず連絡を入れましょう。

自分が相続人であると知った日から3ヵ月以内なら相続放棄できる

相続放棄は「相続開始を知った日から3カ月以内」とされていますが、「亡くなったことは知っていたが、自分が相続人になったことは知らなかった」ケースがあります。
その場合、気づいた時点で死亡から3カ月以上経っていても相続放棄はできます。借金の督促状が届いたことで初めて知ったとしても、落ち着いて手続きを踏んでください。
もちろん、気づいた日から3ヵ月以上経ってしまうと、自動的に負の財産を相続したことになります。

相続財産管理人の選任の申立ての仕方

申立人となれるのは利害関係人と検察官

相続財産管理人は利害関係人が家庭裁判所に申立てを行うことで選任されます。
利害関係人とは、親族だけでなく、亡くなった人にお金を貸していた人や特定遺贈を受けた人、特別縁故者(内縁の妻や夫など)が含まれます。検察官による申立ても認められています。

家庭裁判所で申し立てを行う

申立ては、被相続人(亡くなった人)の最後の住所地の家庭裁判所で行います。

申立てに費用はかかるの?

申立てには以下の費用が掛かります。プラスの財産だけならこれだけでいいのですが、負の財産がある場合、申立人が相続財産管理人への報酬などの相当額を予納金として納付しなければならない可能性があります。

  • 収入印紙800円分
  • 連絡用の郵便切手(家庭裁判所によって変動あり)
  • 官報公告料4230円

※費用が変わる可能性があります。申立て前に裁判所ホームページでご確認ください。

【参考リンク】
相続財産管理人の専任/家庭裁判所ホームページ

どんな書類が必要?

相続財産管理人選任の申立てを行うには、被相続人に「相続する人がいない」ことを証明しなければなりません。そのために被相続人の親族の戸籍謄本が必要になります。
主な書類は以下の通りです。そのケースによって用意する書類が変わるので、申し出前によくご確認ください。

申立書

裁判所のホームページでダウンロードできる書類です。申立人や被相続人の情報、申立ての理由などを記載します。
【参考リンク】
相続財産管理人の選任の申立書/裁判所ホームページより

被相続人と、その親族の戸籍謄本

まず被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本を用意します。親族以外だと戸籍謄本を取れるのか?と心配になりますが、利害関係人が取得することも可能です。
被相続人の両親や兄弟、兄弟が故人であればその子である甥や姪の戸籍謄本が必要です。
該当の方の「出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本」を提出します。

被相続人の住民票除票

被相続人の最後の住所地の住民票除票を添付します。

どんな財産があるかを証明する書類

不動産登記が確認できるものや、預貯金・有価証券の残高が確認できる書類を用意します。

その他、親族以外の利害関係人からの申立ての場合は、利害関係を証明する資料を揃えます。また財産管理人の候補者がいる場合はその住民票を添付します。

必要書類は被相続人や申立人の状況によって変わります。詳細は裁判所のホームページよりご確認ください。
相続財産管理人の選任/裁判所ホームページより

相続に不安があるなら元気なうちに対策を

相続

今回ご説明したとおり、引き取り手のない不動産は相続放棄をしたとしても、その管理責任からは逃れることができません。ご自身なき後や、お父様お母様の資産状況に不安を抱えているのなら、ご健在のうちに、その財産の整理を始めておくのがいいでしょう。
親子といえど、お金の話は聞きにくいもの。しかし、相続が開始してからでは取れる対策が限られてしまいます。
それぞれに事情はあるかと思いますが、普段から最低限のコミュニケーションを取っておきたいものです。

【参考記事】
【円満な相続を目指そう】相続開始前に知っておくべきことは?

相続・土地問題のお悩みは「ニーズ・プラス」にお任せください!!

ニーズ・プラスは、東京や千葉、埼玉、神奈川を中心に、数多くの物件を取り扱い、豊富な実績とノウハウを有しています。
相続や土地問題でお困りのお客様ひとりひとりとじっくり向き合い、ご要望をお伺いした上で、内容に沿った最善の解決策をご提案致します。
解決の難しい底地問題は、弊社が地主さんと借地人さんの間を取り持ち、底地にまつわる多様な知識を生かしながら、複雑化してしまった底地トラブルをスムーズに解決へと導きます。
弊社をご利用いただいたお客様からは、「トラブルを円満に解決できてよかった」「難しい取引も、すべてお任せできて安心できた」などと喜ばれております。

相続・土地問題についてのお悩みは、ニーズ・プラスへご相談ください。

ニーズ・プラス専任弁護士 監修

TOP