【弁護士監修】地主さん必読!建物買取請求権とは
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地主さんや借地人さんにかかわる借地借家法。以前は「借地法」と「借家法」に分かれていましたが、平成4年に改正法が施行されました。
借地借家法は、貸している側よりも借りている側の権利が強く保障されている点が特徴的です。それがよく表れているものの一つに建物買取請求権があります。
この権利は、借地人が建てた建物を地主に買い取ってもらえる権利なのですが、どのような場合に適用できるのでしょうか?
目次
底地・借地はどんな法律で定められているの?
人が建物を建てて使用する土地の借地権には「借地借家法」「借地法・借家法」が適用されます。それ以外の目的、例えば駐車場や資材置き場として土地を貸し借りする場合は借地借家法は適用されません。
底地・借地関係を結んでいる場合、建物を建てて住むことが前提の土地なので、民法だけでなく、「借地借家法」「借地法・借家法」にも定められています。
建物買取請求権とは?
借地借家法第十三条には、
借地権の存続期間が満了した場合において、契約の更新がないときは、借地権者は、借地権設定者に対し、建物その他借地権者が権原により土地に附属させた物を時価で買い取るべきことを請求することができる
とあります。
では、この条文がどのようなことを示しているのか、ご説明します。
建物買取請求権が認められる要件
借地・底地関係であっても、すべてのケースで「建物買取請求権」が認められるわけではありません。借地権の存続期間が満了した場合においてという部分が非常に重要です。
借地権は当事者間で期間を定めなかった場合、初回は30年、そのあとは20年、その後は10年ごとに更新時期を迎えます。そのタイミングで地主さんから「契約更新を拒否します」と借地人さんに連絡があったが、借地人さんは契約を更新を希望、しかし地主さんに正当事由があり、最終的に契約が終了した場合に限り、建物買取請求権が認められます。
<満たさなければならない要件>
- 借地権の存続期間が満了を迎えるタイミングである
- 借地人さんに「更新しない」旨の通知がなされ、地主さんに正当事由がある
- 借地人さんから地主さんに「建物を買い取ってほしい」旨、通知した
- 借地上に借地人所有の建物が存在している
この要件がすべてそろっている場合に、建物買取請求権が認められます。
地主もしくは借地人の都合により、契約期間の途中で賃貸借契約を終了する場合には、建物買取請求権が発生することはありません。
法定更新(自動更新)の借地は、期間満了により返してもらえるケースは決して多くはない
そもそも、法定更新(自動更新)の契約になっている借地は、新法「借地借家法」、旧法「借地法・借家法」のどちらに当てはまる土地の場合も、地主さんが期間満了により土地を返してもらえるケースは決して多くはありません。
だからこそ、地主さんが借地人さんから「建物買取請求権」を行使されると、経験がないだけに戸惑ってしまうかもしれません。
気を付けたいのが、借地人さんから建物買取請求権の行使されたらその時点で権利義務が法律上、発生するということ。法律上認められる要件が揃っていれば、地主さんは支払いを拒否することができないのです。
のちのトラブルにつながりかねないので、借地人さんは地主さんと書面でやり取りしたほうがいいでしょう。
地主さんが更新を拒む正当事由だと認められるのはどんなとき?
借地人さんの継続使用や更新請求に対して、地主さんが更新のタイミングで異議を申し立てて、そこに正当事由があれば、借地権の存続期間の満了により契約を終了させられます。
ではどんな時に正当事由となるのか、見ていきましょう。
地主さんが自己使用するとき
地主さんが、該当の土地使用を必要とする事情があれば、正当事由となります。この「使用の必要性」は他の要件よりも重要視されています。
使用用途は住宅に限るものではなく、賃貸アパートを建てる、ビルを建設するなど事業用地として使う場合も含まれますが、地主本人の居住の必要性があるケースの方が、認められやすいようです。
借地人の契約不履行があったとき
借地人が地代を滞納したり、借地権を無断で譲渡したりと、債務不履行があった場合は、契約解除できます。こういったケースではもちろん建物買取請求権は認められません。
土地上にある建物が使用できる状態ではないとき
朽ちて屋根が落ちていたり、火災で焼け落ちたりと、その土地上の建物が使用できる状態にない場合は、正当事由になり得ます。たとえボロボロの家だったとしても、屋根があり、人が住める状態であると、認められない可能性もあります。
ただし、このどれかに当てはまったとしても、それが正当事由と認められるかどうかは、ケースバイケースです。
借地権の存続期間の満了により借地権は消滅する
その代わり、「建物買取請求権」が認められた土地は、その土地上の借地権は消滅しているので、借地権を買い取る必要はありません。借地権を買い取ったうえ、建物買取請求権を行使され、建物まで買わなければならない、という状況は起こりえないのです。
借地人に原状回復義務はないのか?
債務不履行で契約解除となった場合は、もちろん借地人さんに原状回復義務が発生し、建物を建てる前の状態に戻して、地主さんに返さなければなりません。
債務不履行とみなされるのは、借地人さんが家賃を滞納していたり、契約した時とは違う用途で土地を使われていたりするケースがこれにあたります。
また、借地人さんが「もうその土地は使わないので、借地権を返したい」というときには、原状回復しなければなりません。
「時価」ってなに?
地主さんは借地人さんに建物を買い取ってほしいと言われたとき、いくらで買い取ればいいのでしょうか?
建物買取請求権の規定には「時価で買い取るべきことを請求できる」とあります。時価をわかりやすくいうと、「今、その建物を売ろうとしたときに、売買できるであろう価格で買い取ってくださいと請求できる」ということです。
そうだとすると、疑問に思うのが「借地権の存続期間が満了を迎える」ような建物は、築数十年は経っているだろうこと。文化的な価値がある建物でもなければ、古びた建物に価値があるようには思えません。
とはいえ、たとえ建物の価値が二束三文でも、借地人さんにとって「取り壊し費用」が発生しないことは大きなメリットです。
建物買取請求権ができた背景
建物買取請求権は、本来なら借主である借地人さんが更地の状態に原状回復をして地主さんにお返しすべきところを、取り壊さないでいいばかりか、建物を買い取ってもらえる権利です。
地主さんにとっては、自分の意思で建てたわけではない建物を買い取らなければならないので、納得はいかないかもしれません。圧倒的に借地人さんに有利な権利のように感じます。
ではなぜこのような権利ができたのでしょうか?
この権利は、借地借家法の元となった法律、「借地法」「借家法」から引き継がれたものです。そのため、現代の状況とは異なる前提で定められています。
はるか昔は地主さんの立場が強く、簡単に「借地権の存続期間の満了による契約終了」が行われていたようです。そうなると、借地人さんはその土地に住み続けられませんし、自分が建てた建物も使えなくなってしまい、路頭に迷ってしまうかもしれません。戦中・戦後に、弱い立場であった借地人さんを守るために、強い権利が与えられたのです。
それだけでなく、まだ使える建物を取り壊すことは、社会的損失であると考えられていました。
そこで、まだ使える建物が建っている場合は、借地人さんを守る意味と、まだ使える建物を取り壊すのは社会的損失であるとの考えから、地主さんが買い取るようにと法改正がなされたのです。
「建物の買取を請求されたが応じたくない」どうしたらいい?
地主さんにとっては価値のない建物であれば、「買い取りたくない」と思うのも無理はありません。では、回避する方法はあるのでしょうか?
残念ながら、要件が揃っていた場合、地主さんは建物買い取り請求を拒否することはできません。
契約時に「建物買取請求権を行使しない」と取り決めても無効
では、契約書に「賃貸借契約を解除することになっても建物買取請求権は行使しない」と記載したらどうなるのでしょうか?たとえ契約書の特約にそのように書かれていたとしても、無効になるので意味がありません。借地人さんが地主さんに建物買取請求をするのは、最終手段。トラブルになる前に、お互いに手を尽くした方がいいでしょう。
底地・借地はセットで売れば高額に
地主さんが借地権を返してほしい場合は、話がこじれる前に、穏便に「借地権を買い取らせてもらえないか」借地人さんに交渉するのも賢いやり方です。
一度揉めてしまうと、最悪、裁判をすることになり、時間もお金も費やさなければならなくなります。それに比べると、地主さんが借地人さんにいくらか支払って、借地権を買い戻す方がメリットが大きいでしょう。
【参考記事】
「底地を買い取りたい借地人さん」「借地権を買い戻したい地主さん」どこに相談すべき?どんな方法があるか?
もし地主さんと借地人さんがいがみ合っているのなら、それは非常にもったいない状態です。借地権がついている土地は、「底地権だけ」「借地権だけ」で売却しようとしてもなかなか売れません。買い手がついたとしても相場価格を大幅に下回る価格である可能性が高いのです。
地主さんも借地人さんも、その土地を利用する予定がないのなら、協力して一緒に底地・借地を売却するのもおすすめの方法です。バラバラで売却するより、はるかに高値が付きますから、原状回復費をその中から負担しても、双方にお金が残ります。
まずは冷静に「持っている底地・借地をどうしたいのか」考えることが大切です。
【参考記事】
底地権について
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