【弁護士監修】判例から学ぶ!底地上の建物の増改築には地主さんの承諾が必要!?
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土地の賃貸借契約において、建物は借地人さんが所有するとはいえ、土地はあくまで地主さんのものです。その土地を利用するためには、決められたルールに従わなければなりません。
(参考:「底地」とは?ニーズ・プラスの底地への取り組み)
地主さんと借地人さんとの間でよくあるトラブルが、底地上の建物の増改築にまつわるものです。契約の中で「増改築禁止特約」を設定した場合、借地人さんは地主さんに増改築する前に承諾を得る必要があります。
もし建物の増改築を行う前に地主さんへ相談する手間を惜しんだり、承諾を得ないままに増改築を強行すると、契約解除にもなりかねません。
本記事では、建物の増改築をめぐる2つの判例をご紹介するので、底地上の建物の増改築について理解を深めていただければと思います。
ぜひ最後までお読み下さい。
目次
「増改築禁止特約」の有無を確認する
先ほどお話したように、地主さんと借地人さんの間で結ばれる土地賃貸借契約の中に「増改築禁止特約」という項目があります。
この「増改築禁止特約」を賃貸借契約書に盛り込むことで、借地人さんが勝手に増改築することは契約違反となり、最悪の場合、地主さんからの契約解除が法的に認められる場合もあるので注意が必要です。
もし契約条項に「増改築禁止特約」がないと、多くの場合、地主さんは増改築を止めることができなくなります。
このように、土地の賃貸借契約における「増改築禁止特約」という契約条項はとても大切なのですが、実際は契約書上で明文化することなく、なかば慣習的に対応してしまっているケースも多いようです。契約を結ぶ前に「増改築禁止特約」の有無を確認しましょう。
ただし、1点だけ注意があります。「増改築禁止特約」では、雨漏り修繕や外壁塗装などは、建物の維持管理において必要な修繕となり増改築に該当しません。
建物の増改築をめぐる裁判でも、建物の「増改築」か「修繕」かが争点となることが多いようです。
判例から学ぶ!底地上の建物の増改築にまつわるトラブルについて
さて、ここから2つのケースを解説していきます。
ケース1は、増改築禁止特約違反として裁判で認められた判例。
ケース2は、増改築禁止特約違反に相当せず、原告(地主さん)の訴えが認められなかった判例です。
この二つの判例に、どのような違いがあったのでしょうか。裁判所の判断の前提となる事案の経緯を詳しく説明しましたので、さっそく見てみましょう。
ケース1:増改築禁止特約違反と認められた事例
ケース1では、原告(土地の所有者)側の訴えがほぼ全面的に認められた判例です。ここまで原告側の主張が認められる判例は珍しいとも言えます。
裁判の争点について、原告と被告、それぞれの主張に注目して見てみましょう。
事案の概要
登場人物
- 原告:土地の所有者
- 被告①:土地の賃貸借契約書の相手方(借地人)
- 被告②:建物の所有者
- 被告③:建物の占有者
訴訟の背景
土地の所有者である原告は、被告①(借地人)との間で土地にかかわる賃貸借契約を締結していた。被告①(借地人)は、賃借していた土地上にある建物に増改築工事を行った。
原告の請求
原告は、賃貸借契約を解除した上で、借地人である被告①に対して以下を求めた(なお、その他の原告の請求については省略)。
被告①(以下「被告」)に対して
- 原状回復として土地の明渡し
- 約定損害金の支払い
賃貸借契約の内容(要旨)
- 目的:建物の所有
- 期間:60年
- 賃借人の遵守義務
賃貸人の承諾を得ずに地上建物の増改築または大修繕をしないこと。
賃貸人の承諾を得ずに賃借地の転貸または賃借権の譲渡、地上建物の譲渡をしないこと。 - 契約の解除
- 賃借人が3か月以上賃料の支払を怠ったとき、その他の契約違反行為をしたときは、賃貸人は即時解除をすることができる。
- 損害賠償の予定
賃借人が土地の明渡義務を履行しないときは、契約終了の日の翌日から明渡し済みまで契約終了時の賃料の倍額に相当する損害金を支払う。
立地・建物などについて
◆立地
- 東京都内・東部・商業地域
- 宅地/地積:約143平方メートル(約43坪)
◆建物
- 旅館/鉄骨造陸屋根5階建て
- のべ床面積:約362平方メートル(約110坪)
訴訟の争点
今回の裁判での争点は、以下の2点になります。
- 増改築等禁止特約違反
- 信頼関係の破壊
◆争点1:被告が行った工事が増改築禁止特約違反に相当するかどうか?
◆原告の主張
- 建築基準法では、 建築物の大規模修繕、もしくは大規模の模様替えをしようとする場合、工事着手前に建築主事(=原告/土地所有者)による建築確認を受けることを要求している。
- 今回の工事は、建築基準法上の大規模修繕に該当する。
- 工事により建物は実質的に一新した。
以上、工事規模、内容、工事費用額、工事期間、いずれの面からも、賃貸人の承諾を要する改築、大修繕に該当することは明らかである。
◆被告の主張
- 今回の工事は、耐震補強工事、内装工事をメインとしたものである。
建物の床面積を増加させておらず、建物の建直し工事を行っていない。建築確認も不要であったことから「増改築」や「大規模修繕」に該当しない。 - 工事が行われた当時、本件賃貸借契約の存続期間はまだ25年以上存続する。
この工事によって建物が得た価値を25年以上の期間で減価償却した場合、建物に残る残額は皆無であり、賃貸人の不利益はない。 - 工事の直近に行われた鑑定で算定された地代額への増額に応じている。
この点も賃貸人の不利益はない。 - 建物自体に大きな変更はない。
地震の揺れ等に対し脆弱との診断を受けたため、将来の利用における人命、財産等の保護の見地から今回は必要な耐震補強工事を行ったにすぎない。
以上により、本件工事をもって増改築工事禁止特約違反とはならない。
◆争点2:原告・被告間の信頼関係は破壊しているか?
話の前提として、信頼関係破壊の起因として以下の建物工事が挙げられます。
- 耐震工事+内装工事
- ホテル営業停止に伴う撤去工事
- エレベーター工事
まず最初に、信頼関係は破壊していないという被告の主張から見ていきましょう。
◆被告の主張
- 耐震工事+内装工事について
・そもそも、本工事は原告の承諾は不要と考えていた。しかし、原告との信頼関係を考え、念のため本件工事を行うことを事前に原告に通知した。・通知後、原告から通知のあった内容よりも工事の規模が大きいのではないかと疑問を呈され、図面の提出を求められたことからすぐに調査し返答をした。
※この時点で図面の提出は無く、工事内容の返答のみ・その後、原告から工事図面の提出と工事内容の説明・立会いを求められたため、謝罪とともに本件工事の図面を送付した。※この間1ヶ月の期間が空いている
・また、原告及び原告代理人の立会いの下、被告会社従業員2名及び工事担当者が建物にて工事の内容の説明を行った。
・最終的に、原告から信頼関係を喪失したとして賃貸借契約を解除する旨の通知を受けた。その通知に対しても、工事の内容を説明し、理解を求める通知を送付した。
- ホテル営業停止に伴う撤去工事について
・建物で行っていたホテル営業を停止し、以下の工事を行った。
a.ホテル用に設置していた看板の取り外し
b.屋上タンクや変電設備等の撤去、取り外し
c.外壁の塗装工事
・外観上は大きな工事に見えるが、一部建物の撤去および塗装工事であり、増築、改築工事に該当するような工事ではない。 - エレベーター工事
純粋にエレベーターの交換を行っただけであり、建物の構造につき何ら変更を加えておらず、エレベーターの交換に必要な限度で撤去、修復を行ったのみである。
【被告の主張:まとめ】
- 原告に対し、原告の承諾を要する改築工事に当たらないことを誠実に伝えている。
- もともと原告の承諾の必要のない本件工事についても原告との信頼関係を害さないよう誠実な対応を行い、原告の要請に応じて図面提示の他改装工事中の本件建物内において立会いまで実施している。
- 以上の工事内容及びその交渉過程に鑑みれば、賃貸借契約の当事者に必要とされる信頼関係が害されたとはいえないことは明らかである。
◆原告の主張
- 耐震工事+内装工事について01
・当初、被告および被告の代理人から、賃貸人の承諾を要する増築、改築工事ではないとの説明を受けていた。・実際に実施された工事は工事期間が3ヶ月を超え、工事費用額や投入された人工の数等々の要素のいずれをとっても大々的な工事であった。
・そこで予め開示された内容より大掛かりな工事が始まっているとのクレームを入れ、改修計画図面の提出を求めた。
・しかし、被告は今回のリフォ ー ムは従前お伝えしたとおりの内容になるとの回答をするのみで、1か月以上改修計画図面を提出しなかった。
・さらに、工事が相当程度進捗したため不安を強め、内容証明郵便にて図面に基づく現場説明を要求した。
・(ようやく)工事にかかわる改修計画図面の提示があったものの、既存内装、電気工事、空調等設備、建具等に既存新設を行うことを記載するのみであった。
・しかも、耐震補強工事の実施を予測させるような記載はされておらず、補強工事であることが明らかとなる伏図、 軸組図等の補強工事計画図面は用意周到に排除されていた。
- 耐震工事+内装工事について02
・工事により、建物は建て直しを免れ、倒壊、崩壊しがたい構造に補強され、長期使用できる状態となった。・被告③の長期使用が可能となったことをみても、建物の現在の資産価値、賃貸借契約の終了時点での建物の資産価値は、飛躍的に向上したと考えられる。
- 耐震工事+内装工事について03
・工事が建物の安全性を向上させ、建物の利用者その他の生命、安全を図るため必要であることは否定はしない。・しかし、その工事と賃貸借契約上の制約とは矛盾しない。被告は工事の実施を企画した時点で速やかに賃貸人である原告の承諾をとりつけるか、承諾に代わる裁判所の許可を得ればよい。
- ホテル営業停止に伴う撤去工事とエレベーター交換工事について
・ホテル営業停止に伴う撤去工事
・エレベーター交換工事
いずれも賃貸人である原告に何らの通知もなく実施されている。 - 被告③(建物占有者)について
・工事は、建物所有者が営んでいた旅館用途から被告③のために建物の用途を変更するものである。・この変更は、建築主事(=原告)の確認を要する範疇に属する用途の変更であり、その費用は実質的に被告③の負担である。
・工事後は、建物の所有者である被告会社(被告②)は本件建物から不動産収入を得るだけであって、本件建物の使用には全く関わらない。
以上の事実関係から、建物について、実質的には契約上禁止されている無断での借地上建物の譲渡にあたるとさえ考えられる。
【原告の主張:まとめ】
以上の通り、被告の対応は背信性は著しく、原告と被告との信頼関係は破壊されている。
◆争点1:裁判所の判断:被告が行った工事が増改築等禁止特約違反に相当するかどうか?
- 工事は耐震補強工事、および建物の内装変更工事が主な工事内容である。
・耐震補強工事
本件建物の耐震性は補強前の1.75倍から2.40倍に向上した。・内装変更工事
用途が旅館にほぼ限定されていた建物が施設として利用できる状況に至る。よって、建物は工事により、その耐用年数が伸長し、経済的価値が上昇したものと認められる。工事は、賃貸借契約における増改築禁止特約が定める「大修繕」に該当するものと評価するのが相当である。
- 被告は工事が建築基準法上、 建築確認を要する工事ではなかったことから、増改築禁止特約に該当しないと主張する。しかし、建築基準法の趣旨、目的は、増改築禁止等特約の趣旨、目的とは必ずしも一致しない。
建築基準法上建築確認を要する工事ではなかったことが、ただちに賃貸借契約における増改築禁止特約に該当しないことを意味することとはならない。
◆争点2:裁判所の判断:原告・被告間の信頼関係は破壊しているか?
- 被告は前借地人から本件賃貸借契約における賃借人の地位を相続により承継した後、原告との関係が疎遠になっている。
- 原告に伝えられないまま、建物のエレベーター工事が行われたことが不快であったとを告げられているにもかかわらず、翌年に建物で看板撤去等の工事を行うことを自発的に原告に対して伝えることをしていない。
- 耐震工事+内装工事に関しても、当初は実際に行われる工事内容とは異なる内容を原告に伝えている上、工事に関わる改修計画図面の開示を要望されたにもかかわらず、1か月以上これに対する何らの回答も行なっていない。
- 被告が開示した図面では工事内容の全貌が明らかになっておらず、原告および弁護側が建物における工事の見聞を要望し、実際に見聞が行われて初めて建物に対する耐震補強工事が明らかになった。
- 賃貸借契約に増改築禁止特約が定められている以上、賃借人として建物にどのような工事が行われるのかを適切に把握し、必要に応じ、あるいは賃貸人である原告からの求めに応じて、工事内容についてできる限り正確な情報を伝えるべき義務がある。
- 工事に関して適切な情報提供を行わなかった結果、原告は工事に対する許否の判断や必要な交渉を適切に行う機会を奪われている。
以上、耐震補強工事が含まれている点を最大限考慮しても、工事について、被告が原告に対する信頼関係を破壊するおそれがない事情は認められず、原告と被告との間の信頼関係は破壊されているものと認めるのが相当である。
◆判決
被告①は、原告に対し
- 土地を明け渡せ
- 土地明渡し済みまで1か月40万円の割合による金員(金額)を支払え
※その他の被告についての判決は省略
◆弁護士のワンポイント解説
Q:本ケースでは、被告(借地人)にとってかなり影響(負担)が大きい判決となったようです。本ケースにおける裁判のポイントを教えてください。
A:建物収去土地明渡請求の場合には、原告(地主)の請求が認められると、被告(借地人)は、借地上の建物を取り壊した上で土地を明け渡す必要があり、被告へ与える影響が大きいといえます。そのため、一般的には、まずは和解(話合い)での解決を目指すことが多いと考えられます。
Q:和解ができなかった場合はどうなりますか?
A:仮に和解ができなかった場合でも、増改築禁止特約違反を理由とする借地契約の解除が認められるかどうかは、以下の2段階で判断されます。
①問題となる工事が特約に違反するといえるか
②(仮に特約違反があったとした場合)当事者間の信頼関係を破壊するおそれがないと認められるか。
したがって、増改築禁止特約違反が認められたとしても、必ずしも契約解除まで認められるとは限りません。以上の点を踏まえると、本判例のように原告の請求を認める判決は多くはないと考えられます。
Q:なぜ今回は原告の請求が認められたのでしょうか?
A:本判例では、増改築禁止特約に違反する程度の工事が行われたことに加え、特約が設けられているにもかかわらず、借地人から地主へ工事に関する情報が正確に伝えられていないという点が重視され、信頼関係が破壊されたと評価されたものと考えられます。
ケース02:増改築禁止特約違反が否認された事例
続いてケース02の判例です。ケース02では、増改築禁止特約違反が認められませんでした。建物の増改築か、あるいは修繕かが裁判の争点となります。
事案の概要
登場人物
- 原告:土地の所有者
- 被告:借地人、土地賃借人
- 建物収去と土地の明渡し
- 賃料相当損害金の支払い
- 契約期間:20年
- 特約:原告(土地賃貸人)の事前の承諾なく借地上の建物につき増新築・改築大修理等を行った場合には原告は無催告解除ができる
- 東京都内・東部
- 宅地/地積:約700平方メートル(約212坪)
- 居宅/木造瓦葺2階建て
- のべ床面積:約80平方メートル(約24坪)
- 壁面の張替え:建物の四方全面に及ぶものであり、広汎な工事である。
- 屋根の張替え:建物2階部分の屋根は全部張替えがされるなど、多岐にわたるものになっており、屋根の過半を工事したといえる。
- 壁面の補修について
現況の写真によれば、補修された西側壁面等と似た色の壁面が北側、南側及び東側にも存在すると言うに過ぎず、北側、南側及び東側の壁面が補修されたことを示すものではない。
建物の西側部分には、壁面補修のためのシートが貼付されていたが、シート部分は壁面補修部分のみであり、原告主張の部分には貼付されていなかったことが認められる。
- 屋根の補修について
証拠、および被告の弁論によれば、建物の2階部分の屋根及び1階の補修は屋根全体の面積の約40%程度補修したことが認められる。
訴訟の経緯
被告(借地人、土地賃借人)が原告(土地の所有者、土地賃貸人)から賃借していた土地上に建物を所有していたが、その建物に増改築工事をおこなった。
原告の請求
原告は被告に対して土地賃貸借契約を解除した上で、以下の2点を求めた。
賃貸借契約の内容(要旨)
原告を土地賃貸人、被告を土地賃借人(借地人)として以下の内容の土地賃貸借契約を締結。
立地・建物などについて
◆立地
◆建物
訴訟の争点
契約解除の有効性
前提事実
被告(土地賃借人、借地人)は事前に原告(土地賃貸人)の承諾を得ることなく、建物につきその屋根及び外壁の補修工事を行った。
その後、書面にて2度、原告は被告に対し本件賃貸借契約を解除する旨の意思表示を行った。
◆争点:賃貸借契約の解除は有効か?
◆原告の主張
建物の壁面の張替え、および屋根の張替えは大修理というべき増改築に当たる。
被告は、原告の事前の承諾を得ることなく大規模な修繕工事を行ったものである。紛争を事前に解決するための法律上の手続を利用せずに勝手に修繕工事を行ったものであり、賃貸人に対する背信性は高いと言うべきである。
増改築許可の申立てに際して、裁判所はこれを認容する場合、財産上の給付を命じるのが通常であるが、被告は増改築許可の申立てを行わなかったために、財産上の給付という支出を不当に免れている。
◆被告の主張
壁の補修は、西側の全面と、北側及び南側の一部であり、弱っていた部分の修理である。
屋根の補修は、本件建物の2階部分の全部と1階部分の一部であり、雨漏りを防ぐものである。
以上、いずれも大規模修繕というものではない。
借地借家法に基づく増改築の許可の申立てを行わなかったことは認めるが、それが賃貸人である原告に対する背信事由にはならない。
◆裁判所の判断:賃貸借契約の解除は有効か?(争点)
◆判決
被告は原告に無断で壁面及び屋根部分の補修工事を行ったが、土地賃貸人に著しい影響を及ぼさず、賃貸人に対する信頼関係を破壊するおそれがあると認めるに足りないのであって、原告が行った賃貸借契約の解除は無効であるというべきである。
◆弁護士のワンポイント解説
Q:本ケースにおける裁判のポイントを教えてください。
A:本事案で工事が行われたのは契約期間終了の約2年前と期間満了が迫った時期ですが、工事の程度を踏まえ、賃貸借契約の解除が否定されました。判旨では明言されていませんが、工事の程度から見て、そもそも賃貸借契約上禁止された増改築工事には当たらないと判断されたものと考えられます。
Q:「工事の程度」には、具体的な基準のようなものはありますか?
A:どの程度の工事が増改築にあたるかという具体的な基準は、特にありません。ただし、ケースの判例でも言及されているとおり、増改築禁止特約の趣旨(目的)が増改築工事により建物の耐用年数が大幅に延長することで、借地権の存続期間に影響を及ぼすこと等を避ける点にあると考えられることからすると、建物の耐用年数に大きく影響するような工事であるかどうかは1つのポイントになると考えられます。
まとめ
以上、今回は底地上の建物の増改築にまつわるトラブル事例を、判例を通じて解説しました。
「増改築禁止特約」が契約書に明記されていない場合は、借地人は自由に建物の増改築を行うことができるということになります(※ただし、契約上、建物の構造や規模等について条件がある場合には、その条件の範囲内で行うことになります)。
もっとも、契約書上に上記特約が明記されていない場合でも、地主又は借地人において、商慣習として増改築にあたり地主の承諾が必要だと考えている場合もあるようです。
したがって、当事者間で認識にずれが生じないよう、増改築工事を禁止する場合には、契約書に増改築禁止特約を設けること、その場合にはできるだけ具体的にどのような工事が禁止対象となるのかを明記することをおすすめします。
今回ご紹介した判例のように、底地にまつわる不明、不安がある場合は、交渉がこじれる前に専門家への相談を検討しましょう。当事者間で交渉するより、スムーズに決着することが期待できます。
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弁護士監修