相続税の申告と納税、実際の手順は?
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一生涯でそう何度も支払うことがない相続税。他の多くの税金は、申告期間や期限がはっきりしていますが、相続税に限っては亡くなった日を起点として考えるので、人によって期限がバラバラです。
そのうえ、相続税は親しい人が亡くなったショックを受けているなか支払う税金なので、いつもは冷静な方も、支払いに迷ってしまうかもしれません。
今回はいつ、だれが、どこで相続税を支払うのか? についてご説明します。いざというときに備えて、シミュレーションしておくと慌てずに済みますよ。
目次
相続税とは?
相続が発生した際に課される相続税は、一部の人にだけ支払い義務のある税金です。ある程度の資産がある方が亡くなった場合に、その相続人に課されます。
相続税には基礎控除がある
相続税には基礎控除があり、総資産から3,000万円が控除されます。そこから更に法定相続人×600万円が引かれます。
例えば、相続人が妻と子ども3人いたとすると、基礎控除額は、3,000万円+(4×600万円)=5,400万円です。
相続税の支払い対象か確認する
上記の説明でもわかるように、まずは、相続税の課税対象なのかを知る必要があります。以前より基礎控除額が減額されたことで対象者が増えたとはいえ、課税対象は全体の約8%ほど。多くの人は対象外です。
気を付けたいのが「うちには関係ないわ」と思っている財産額がボーダーライン前後の方です。
そんなに財産は持っていないと思っていても、不動産や証券があると思いのほか、価値が上がっていることもあるのです。
詳しくは以下の記事をご覧ください。
【参考記事】
相続税、我が家は支払い対象?
借地が含まれているなら早急に確認を
借地に住んでいると、自分の財産であるという認識が薄いかもしれませんが、借地権も立派な財産です。借地権は実際に売ろうと思ってもなかなか難しいのですが、評価額は高いので、注意しなければなりません。
数代に渡って住み続ける借地は、都市部の一等地でも、周辺地価から考えたらかなりの低額で借りていることがあります。
地代は月数万円で済んでいたとしても、相続税評価額は周辺相場に準じた額になるのです。
【関連記事】
相続前に対策を!意外と厄介な借地の相続
相続税の支払い対象だったら?
相続税の支払い対象であったら、相続発生から10ヵ月以内に相続税の支払いをしなければなりません。
元気なうちに財産の把握は済ませておく
10ヵ月以内というと長いようにも思えるかもしれませんが、亡くなった後の手続きはこれだけではありません。いざ、ことが起こってみると「あっという間だった」と感じる人が大半です。
できることならご本人が元気なうちに、相続人となりうる人が財産の内容について把握しておくほうが良いでしょう。
また、早い段階から節税対策をすることで、最終的に支払う相続税の額を抑えられる可能性があります。
【参考記事】
相続マニュアル 相続が発生したら何から始めればいいのか?
相続人の人数を把握する
相続税の基礎控除額を計算するためにはまず、相続人の人数を確認します。人数の把握は通常はそう難しいことではないのですが、被相続人の子どもが亡くなっていたり、実は隠し子がいたりと思わぬ事実が発覚することもあります。
初期の段階でしっかり把握してから遺産を分割しないと、あとから相続人の存在が分かった場合、すべての遺産分割をやり直さなければならない事態に陥るかもしれません。
日頃から親戚との交流を保ちつつ、戸籍謄本をしっかり確認し、漏れがないように注意しましょう。
相続税申告の実際の流れ
ここからは相続税の申告の実際の流れをご説明します。
4か月の時点行う準確定申告は亡くなった方の代わりにその年の所得を申告します。それに対し相続税の申告は、相続人が相続した内容について申告するものです。
申告書は各相続人がそれぞれに用意し申告する
相続税の申告書は、相続人が複数いた場合は、通常それぞれが用意し、各自で申告します。複数の相続人の申告をまとめてすることもできますが、また別の書類が必要になるので、それを選択する人は少ないようです。
申告するためには、相続人同士で遺産の内容を把握し、正しく分配された財産について知らなければなりません。
相続税の申告書を記入する
相続税の申告書に記載する内容には以下のようなものがあります。
<基本情報>
・被相続人の氏名や住所などの情報
・財産を取得した人(各相続人)の氏名や住所などの情報
・取得原因(相続・遺贈・相続時精算課税から選択)
<財産の内容>
・取得財産の価額(課税価格の計算)
・法定相続人の数や按分割合など(各人の算出税額の計算)
・相続税額
皆が共通して記入するのは上の事項ですが、「限定承認をする」「生命保険金があった」「相続時精算課税制度を利用した」場合などは、別書類の記入・提出が求められます。
記載したものは一例です。必要書類はみなさん違いますので、申告の際にはよくご確認ください。
相続税の申告書等の様式一覧(令和元年分用)/ 国税庁ホームページ
一般の方が自分で書くのは大変
相続税の申告書は税務署のホームページでダウンロードができますが、基本の「相続税の申告書」だけでなく、各種添付書類が記載されています。もちろん税務署でも手に入れられます。
すべての方に全部の書類が必要なわけではなく、必要なものだけを選択し、提出します。
相続は人生にそう何度もあることではないので、多くの方は初めての経験です。不慣れな作業を限られた時間の中で行うのは大変です。
費用はかかりますが、税理士などの専門家に依頼するケースも多いようです。
相続税の申告書を税理士に依頼する
個人に入る税務調査としては、相続をきっかけにしたものが代表的です。特に財産の多い地主さんは税務調査の対象になる可能性大。起こった相続の10%以上に税務調査が入るのですから、他人事ではありません。いい加減には申告しない方がいいでしょう。
ちなみに相続税について税務調査が入った場合、その8割以上が申告漏れなどを指摘されます。
申告漏れを指摘されて修正すると、本税に加え、延滞税や加算税が課されます。ご自身には難しいと感じたら、早い段階で税理士に相談したほうがいいかもしれません。
今どきの税理士は専用ソフトで電子申告
最近は税理士協会でも電子申告を推奨しています。税務署を訪れての申告に比べると、時間の短縮にもなりますし、電子申告なら手書きによる誤字や判別ミスが起こらず、税務署も助かるからです。
専用のパソコンソフトを使う税理士が増えており、それぞれの数字を打ち込んでいくだけで申告書の作成が完了します。
個人だと国税庁のe-Taxを使うことになりますが、相続税の申告で利用しようと思うと、一般の方にはハードルが高いようです。
【参考記事】
相続税の電子申告、2019年10月から開始予定!e-Taxってなに?
【e-tax】2019年10月1日から開始した相続税の電子申告をわかりやすく解説
税理士にかかる費用は?
税理士への支払いは、申告書の準備から申告、納税額記載の納付書の準備まですべてを依頼したとすると、相続財産の1~2%程度になるようです。もちろんその費用は、総資産額や調査時間などによっても前後します。最初の段階で見積もりをもらい、依頼するかどうか検討するといいですね。
相続財産の多くが現金なら一般の方もチャレンジを
相続財産に不動産や証券が数多くあり把握するだけで大変なら、申告書は税理士に依頼したほうがスムーズでしょう。
しかし、ほとんどが現金なら、税務署の職員に相談したり、1時間1万円ほどの税理士相談を活用したりすることで、ご自身での作成も可能です。費用を抑えたいなら、自治体で開催される無料の税理士相談などもありますので、ぜひ利用したいところです。
遺産分割の決定後、どうやって財産を受け取るの?
不動産に限らず、相続財産は被相続人が亡くなった時点で、所有権が相続人に移転します。遺産をどう分割するか決まるまでは、相続人全員で共有している状態です。
では、財産の配分が決まったら、相続人はどのように受け取るのでしょうか?
1、銀行の通帳に入ったお金を受け取る
通帳に入っている被相続人のお金を受け取るには、被相続人が亡くなったことを示し、相続人であることを証明する書類の提出が必要です。
銀行によって違うこともありますが、
・被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
・相続人全員の戸籍謄本
・相続人全員の印鑑証明書
・被相続人のキャッシュカード、通帳
・遺産分割協議書(法定相続分通りなら不要)
などの書類を銀行から求められます。
相続人の中に海外居住者がいるなら確認を
グローバル企業が増え、国外で働く日本人が増えています。日本で起こった相続には日本の法律が適用されます。手続きに使われる印鑑証明は日本に住民票がないと取得できないので、海外居住者は銀行から求められたときに用意できず、困ることも。
相続人の中に「海外に住んでいて日本に住民票がない」「外国籍の方と結婚し、日本国籍がない」方がいらっしゃると、手続きに時間がかかります。
相続発生時の対応について、相続人となりうる人同士で確認しておいた方がいいでしょう。書類取得や相続税支払いのために何度も日本と海外を往復しなくて済むかもしれません。
【参考記事】
「相続人の一人が海外居住者だった」どうすればいい?
2、不動産を受け取る
被相続人が亡くなった時点で、すでに不動産の所有者は相続人にうつっています。しかし、登記をしていなければ、売買もできませんし、権利も主張できません。
登記をし、自分のものだという証拠を残す
登記を変更すれば自分の所有物だと証明できます。相続登記は義務ではないので、つい後回しにしがちですが、何かあったときに自分のものであると証明するために大変重要なものです。
登記をしていなくても固定資産税の支払い義務は相続人にあるのに、法的にはその権利が守られないのですから、登記は必須です。相続手続きの一つとして必ず行うようにしましょう。
日本中には登記変更がなされていない土地が増え続けています。相続人が土地の存在を知らないまま何代も相続され、いざ処分しようとしたときには数十人の共有状態になっていることも少なくありません。
相続時に遺産分割協議書が作成されないと、すべての財産は法定相続分で分配されたことになります。不動産があれば、すべて共有状態になるのです。
【参考記事】
【事例で見る相続トラブル】相続登記
3、その他
被相続人が生命保険に入っていた場合
被相続人が生命保険に入っており、受取人が相続人になっていた場合は、指定された相続人が生命保険金を受け取れます。しかし、みなし相続財産となるので、相続税の課税対象に含めます。ただし、相続人数×500万円の基礎控除がありますので、よほど受取金額が多くなければ多額の相続税を支払うことにはなりません。
みなし相続財産とされるものの、受取人に指定された相続人が全額受け取れます。各保険会社の規約に従って手続きをします。
死亡退職金を受け取る場合
上記の生命保険金がある場合と同じく、死亡退職金もみなし相続財産となりますが、相続人数×500万円の基礎控除があります。生命保険と死亡退職金の両方があった場合もそれぞれから基礎控除ができます。
相続に伴い税務調査が入ると、それまでのお金の流れや資産について、事細かに調べられます。相続税の申告をおろそかにすると、ただでさえ負担の多い相続税に、更に延滞税や加算税まで課される可能性も高いのです。
できることならご本人がお元気なうちから相続に向けて準備をしておきたいものです。
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