【相続税対策】賢い贈与のテクニック
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「いずれは子どもが相続することになる財産、私が元気なうちにゆずって、それを有効活用し幸せに暮らす姿を見守りたい」と思うのが親心です。
ただ、日本には「贈与税」という税金があり、無計画に贈与すると、多額の税金を徴収されることになってしまいます。
そのため、財産を無駄なく、有効に生かしてもらうには長期で計画を立てる必要があります。税金対策は思いのほか気力や体力を使います。まだまだ元気な60代に入ってすぐにはじめれば、余裕をもって財産の行く先を見届けられるでしょう。
今回は、贈与税とはどんなものなのか?節税対策のための贈与にはどんな方法があるのか?ご紹介します。
目次
贈与税とは?
贈与税は、贈与された側(受贈者)に支払い義務がある税金です。贈与された額によって課税される税率が変わる累進課税です。
一般贈与財産と特例贈与財産
平成27年施行の法改正で贈与税の税率は一般贈与財産と特例贈与財産に分けられました。
特例贈与財産
特例贈与財産とは、直系尊属(父母や祖父母など)から、その年の1月1日において20歳以上の者(子・孫など)への贈与財産のことです。例えば3月1日に20歳になった人は、翌年1月1日以降の直系尊属からの贈与なら特例贈与財産の税率が適用されます。この特例贈与の方が次の一般贈与よりも贈与税は低く設定されています。子や孫世代へ贈与してもらい、そのお金を使って景気を良くしたいということでしょう。
一般贈与財産
特例贈与財産以外のものはすべて一般贈与財産とされます。兄弟、夫婦間、血縁のない者の間の贈与は一般贈与財産となります。また、直系尊属からであっても20歳未満の子や孫への贈与も一般贈与財産です。
「贈与」とするには双方の合意が必要
民法では贈与に関して、贈与者と受贈者との意思の合意を要件としています。税法もこの民法を基に考えられているので、双方の意思がなければ贈与がなされたとは認められません。
具体的に言うと、親が内緒で子ども名義の通帳を作り、少しずつ貯金していたとしても、子どもがその通帳の存在や贈与されている事実を知らなければ、贈与したことにはならないということです。
「子どもの結婚資金として親が子ども名義でコツコツ貯めている」という心温まるエピソードも、その存在を知らせぬまま親が亡くなると、せっかくの子ども名義で貯めたお金が「親の財産の一部」だとみなされて、課税対象になってしまうのです。
贈与税の歴史
贈与税の税率はその額によって変わりますが、例えば控除額を除いて200万円以下の贈与でも10%課税されます。一般贈与財産だと、3,000万円を超えると最大税率の55%と半分以上が税金で持っていかれてしまうので、他の税金と比べるとかなりの負担です。
では、このような贈与税がなぜ創設されたのでしょうか。話は明治時代にさかのぼります。
相続税は明治38年に創設されました。表向きの理由は貧富の差をなくすことだったようですが、実際のところは前年に開戦した日露戦争の戦費調達が目的でした。
そうなると「財産を残して亡くなると相続税がかかるのなら、生前に贈与しよう」と思う人が増えるのは当然のことです。そこで、贈与税も同時期に定められたのです。ただし、その頃の相続税は現在の制度とは大きく異なり、税率も1%台でした。
戦後も法改正がなされることはなく、それどころか現在では税率が非常に高くなってしまいました。
毎年110万円までなら贈与税がかからない「暦年贈与」とは?
暦年贈与とは?
暦年贈与は、一般に考えられている通常の贈与を指します。平成15年に「相続時精算課税制度」というこれまでの税法から考えると特殊な制度を創設したために、これと区別する意味から従来の贈与が「暦年贈与」と呼ばれるようになりました。
暦年とは暦(こよみ)のとおり、1月1日~12月31日までの1年間のことです。そして贈与税はこの1年間に受けた贈与額を合計した額を課税対象とします。
例えば、ある年の2月に父から50万円、5月に母から30万円、9月に祖父から100万円の贈与を受けたとすると、その年の贈与税の課税対象額は180万円です。そして翌年はまたゼロからスタートすることになります。
暦年贈与と連年贈与
暦年贈与と似た言葉に「連年贈与」があります。最近では暦年贈与を従来の贈与ではなく、連年贈与のような意味合いで使うことが多くなってきました。連年贈与とは、毎年決まった額を同じ時期に贈与することを指します。
相続税対策として暦年贈与を毎年行う場合、例えば、親が息子に贈与を開始する前に「相続税対策として、私の資産から一千万円をあなたにあげたい。そのために毎年、100万円10年に渡って贈与する。」と話していたとします。
すると、それは「一千万円の贈与を10回に分割して行った」とみなされ、一千万円の贈与契約だったということで贈与税が課税される可能性があります。
しかし、例えば毎年の誕生日に顔を合わせて「今年は100万円贈与するよ」話をして、贈与がなされたとすれば、それはその年だけの契約です。それがたまたま10年間同じ時期に続いたのなら、後から贈与税を課税されるということはありません。
とはいえ、財産が多く相続税がかかる可能性が高いと心配になるものです。その場合は、親が子の通帳に振込み、お互いの通帳に「長男へ贈与」「父からの贈与」などと明記しておくのもいいでしょう。
贈与の基礎控除額は110万円。その金額までなら贈与税はかからない
「110万円までなら贈与税がかからない」とみなさん耳にしたことがあるのではないでしょうか。なぜそのように言われるかというと、贈与の基礎控除額が110万円であるからです。実際に贈与税が課税されるのは、贈与された額から110万円控除された額です。
贈与とみなされないもの
冠婚葬祭にまつわるお金のやり取りは贈与とはみなされません。例えば、結婚式のご祝儀は招待客が多ければ110万円を超えることがありますが、それは贈与とはみなされないため、申告の必要はありません。お香典の場合も同様です。理由は社会通念上、これらを課税対象とするのは無理があるからです。
婚姻期間20年以上なら2,000万円の自宅を非課税で贈与できる「贈与税の配偶者控除」
相続税を節税するための対策として有効なのが「生前に配偶者にマイホームもしくはマイホーム資金を贈与する」というもの。制度の活用方法や、気をつけるべき点をご紹介します。
贈与税の配偶者控除ってなに?
相続・贈与税は、配偶者には非常に有利な規定を設けています。背景には、仮に夫名義であっても、「妻の内助の功で二人共同で築いた財産である可能性が高いことがあります。もちろん妻名義の財産も夫の助け合ってのこともありますので、逆の場合も認められます。
贈与税の配偶者控除は、婚姻期間20年以上の夫婦であれば配偶者自身が住む自宅の贈与が2,000万円まで贈与税が非課税になるというものです。
これに基礎控除を合算すると最高2,110万円までの贈与ならすべて控除され無税になるということです。
この制度を利用しても「相続開始3年以内の贈与の加算」は適用されないので、意識があり、意思を示すことさえできれば死の直前であっても実行できます。ただし、同一の配偶者からは生涯一回しか適用されず、非課税といえど申告は必要なので忘れないように気をつけましょう。
この制度は現在住んでいる必要はなく、居住用不動産を取得するための金銭であっても適用できます。贈与を受けた翌年の3月15日までにそこに住み、その後も住み続ける見込みであれば構いません。
配偶者控除を利用するメリット
配偶者控除を利用するメリットは以下の三つです。
・夫の相続税額を減らせる
・配偶者(妻)の苦労に報いることができる
・自宅を2人で共有状態にしてから売却した場合、譲渡所得税の計算において居住用の特例を夫婦2人で使える
メリットはあるものの、相続前に贈与することが必ずしも相続税の節税につながるとは限りません。最大のポイントは相続税が課されないようなケースでは、節税にならないという点です。
それ以外でもケースバイケースで個々の財産状況によって変わりますので、以下の「気を付けるべきポイント」をよく読み、慎重に検討してください。
気をつけるべきポイント
配偶者は贈与について税金面で控除が多いのですが、生前に贈与しなくても相続税においても優遇されています。
相続時の非課税枠は1億6,000万円
配偶者は1億6000万円まで相続税が非課税なので、わざわざ生前に贈与せずとも、非課税で相続できる可能性が高いのです。
諸経費が高くつく
相続時ではなく、生前に贈与すると諸経費が高くつくことも忘れてはなりません。住宅を妻が譲り受けると相続時は不要な「不動産取得税」や相続時比べて5倍の「登録免許税」がかかります。このほかに司法書士や税理士への支払いを考えると、費用は50~100万円かかるのが一般的です。相続で住宅を手に入れた場合よりはるかに高額です。
小規模宅地等の特例が使えない
相続時であれば使える「小規模宅地等の特例」は、贈与に関しては使えません。この特例とは、一定の要件の下、居住用敷地の330㎡までの土地評価を8割減させるというものです。自宅敷地がこの面積をかなり超えるのであれば生前の贈与が有効ですが、そうでないのに贈与すると費用のほうがかさむ可能性が出てきます。
二次相続の際の相続税が高くなる可能性がある
夫の財産の一部を妻が生前に贈与しておけば、夫の財産が減り相続税を減らせますが、妻が亡くなったときの二次相続の際の相続税が高くなってしまう可能性があります。
節税対策で配偶者に贈与したが先に亡くなるかもしれない
万が一、自宅を贈与した配偶者が先に亡くなった場合、子どもがいないと、元々自分の自宅だったにもかかわらず、配偶者の親兄弟と自宅を共有する可能性が出てきてしまいます。
贈与税の配偶者控除を使うかどうかはよく検討を!
では、配偶者控除はどんな時に使うべきなのでしょうか。
まずは相続が実際に起こった時を想定し、どのくらい財産があるのか書き出して、想定の相続税額を計算します。
そのうえで、以下の2つに当てはまるなら配偶者控除特例の利用を検討しましょう。
・相続税の基礎控除、配偶者の税額の軽減、小規模宅地等の特例を駆使しても、相続税がかなりかかる
・その結果「贈与税の配偶者控除の特例」を利用した生前贈与による相続税の節税メリットが、前述の不動産取得税や登録免許税の増加分よりも大きい
相続税前に確認すべきことについては以下の記事をご参照ください。
【参考記事】
【円満な相続を目指そう】相続開始前に知っておくべきことは?
生命保険を利用して贈与する
親が自分で生命保険に入り、受取人を子にする
遺族が受け取る死亡保険金には特例があります。法定相続人一人当たり500万円が控除されるのです。
例えば、相続人が配偶者と子供2人の計3人で合計1,800万円の死亡保険金があったとします。すると500万円×3=1500万円は控除され、相続財産に加算されるのは300万円(1,800万-500万✕3人)のみとなります。
500万円の非課税枠を使い切る
これは相続人にとって非常に有利な規定です。ぜひともこの非課税枠は使い切りたいところです。
現在、保険に未加入で財産に余裕があるならば、推定相続人2人の家庭であれば、死亡保険金1,000万円程度の終身の生命保険契約に加入することです。預金のまま1,000万円を持っていれば、ストレートに額面通り課税されますが、これが死亡保険金に代われば、500万円×2=1,000万円が控除されて無税となるのです。
高齢でも入れる保険がある
近年はかなりの高齢者であっても、保険に加入できるようになっているようです。生命保険の未加入者であれば、検討してみる余地があるでしょう。
また「一人当たり500万円の非課税枠」は、死亡退職金にも適用があります。死亡保険金と別計算なので利用すればさらに節税できます。
保険料の毎年贈与
親が被保険者となる保険を子どもが契約し、支払う分のお金を贈与する
保険料分を子に毎年贈与し、そのお金で親が被保険者となる保険契約を子がします。受取人は子です。すると親の死亡時、子が保険金を受け取れるのです。この場合は、子が自分のお金で契約した保険なので、みなし財産にはならず、相続に伴い課税されることはありません。
もちろん所得税はかかりますが、相続税や贈与税に比べればかなり少ない税額で済みます。節税対策として使われる場合は、上記の一人500万円の非課税枠の使い切りと併用されることが多いようです。
相続時精算課税制度の利用
相続時精算課税制度は、内容をわかった上で使うのであれば、非常に良い制度です。特に相続税がかからない見込みの方は利用価値があります。さらに使い方によっては、かなりの資産家にもメリットが生じます。
この制度を利用すると、いずれ相続人となる人に贈与をしても、その時点では2500万円までは贈与税がかからずに済みます。その代わり相続時に、相続税評価額に入れられるのです。
相続発生時に相続税を支払うものの、贈与税よりも相続税の方が税率が低く、相続発生前に将来引き継ぐ資産を使えるようになります。
気をつけなければならないのは、制度利用後、暦年贈与ができなくなることです。制度をよく理解したうえでの利用をおすすめします。
詳細は以下の記事をご覧ください。
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